川井健司
わたしがアートを通して描くものは、私たちが日々失いかけていっているものです。
わたしたちは幸せでしょうか?
あなたは幸せですか?
わたしたちは21世紀を生きています。
テクノロジーは発達しています。
わたしたちは快適に暮らすことができます。
わたしたちは欲しいものを手に入れることができます。
この社会は私たちの要求に応え、私たちに、喜び、幸せ、悲しみ、様々な感情を商品として提供します。
それは便利で快適なものです。
確かに私たちはいろいろなものを得ています。しかし、それと同時に何かを失っています。
わたしたちは何を失っているのでしょか?
わたしたちは何を失っているのか目で見ることはできません、しかし、わたしたちは何かを失っていることを感じています。
医療は進化を遂げました。
わたしたちは長く健康に生きることができるようになりました。
わたしたちは簡単に自分の体をかえることができます。
あなたは肉体的にきれいになることができます。
あなたは肉体的に強くなることができます。
わたしたちは肉体的な痛みや精神的な痛みをなくすことができます。
わたしたちは痛みを感じません、しかし、わたしたちがその痛みを感じないということに対して、わたしたちは痛みを感じます。
その痛みからわたしたちは逃れることができません。
肉体的にどれだけきれいになろうと、肉体的にどれだけ強くなろうと、
あなたは、真実のあなた自身から逃れることはできません。
他人をだますことはできても自分をだますことはできません。
わたしの描くものはわたしたちが失いつつあるものです。
わたしは描きだします、誰一人として完璧な人間はいないということを。
だれも強くはありません。
みんな何かに苦しんでいます。
みんなその苦しみに対してもがいています。
わたしはその苦しみを描きます。
わたしはそのもがきを彫りだします。
その苦しみは人生のターニングポイントです。
そのもがきは新たな人生の出発点です。
わたしは人間は美しいと信じています、それは人間がもがき苦しみながら生きているからです。
わたしはその美を描きます。
人間だけがアートを創ります。
だれもが芸術家になれます。
アートは形ではありません。
アートは技術ではありません。
アートは苦しみです。
アートはもがきです。
アートは人生です。
わたしはアートを通して自分を表現します。
わたしはわたしのアートを通してあなたとつながりたいです。
わたしはあなたとあなたのアートを通してつながりたいです。